先日イスラエルがALBM(空中発射弾道ミサイル)、巡航ミサイルを用いて、イラン西部及び中部、ペルシャ湾に浮かぶカーグ島に報復攻撃を実施したが、その後即座にイランからイスラエルに向けて弾道ミサイルが発射され、またイランと連帯するイエメンの武装勢力フーシ派が「イスラエルの侵略に対抗する」という名目で、イスラエルに対して弾道ミサイル、多数の米軍機が駐留するサウジアラビアのプリンス・スルタン空軍基地に対して不明な飛翔体を使った攻撃を行った。
イスラエルの報復攻撃について詳しくは前記事を参照:イスラエルはイランによる報復に対する報復を実施、イラン西部及び首都テヘラン、カーグ島にミサイル攻撃 https://mideast-africa-affairs.com/archives/139
イランとイエメンのフーシ派は少なくとも14発の弾道ミサイルをイスラエルに発射、サウジの米軍基地にもイエメンから飛翔体が飛来し、ガザ地区からもロケット弾が発射される異常事態
イスラエルによる報復攻撃直後にサウジアラビアで空襲警報が発令され、親イラン的なTelegramアカウントMESの投稿をもとにすると、イエメンのフーシ派が飛翔体を多数の米軍機が駐留するサウジアラビア中部アル・カルジ州のプリンス・スルタン空軍基地に向けて発射し、同基地またはその周辺地域で2回の爆発音が確認された。着弾したか迎撃されたかは分かっておらず、同基地の厳重さと対イランにおける戦略的な重要性を考えると飛来した全ての飛翔体が迎撃されたと信じたい
フーシ派はまた同時期にイスラエル首都テルアビブに向けて弾道ミサイル(おそらく1発)を発射。こちらは迎撃が確認された。
1時間後にイランがイスラエルに向けて3つの波で構成された弾道ミサイル攻撃を開始し、筆者が把握している情報では、そのうち第一波はフーシ派も発射(1〜2発で確定させるなら1発)した共同攻撃となり、第一波ではフーシ派と合わせて少なくとも6発の弾道ミサイル発射が確認され、第二波は2発(うち1発が死海近くのヨルダン西部で爆発。正常に着弾したのか迎撃戦闘により破損したミサイルが着弾したのかは不明、おそらくクラスター弾頭で当時ヨルダンには空襲警報が発令されていた)第三波では5発の発射で計13発の発射が確認された。プリンス・スルタン空軍基地攻撃と合わせてテルアビブに発射されたフーシ派の分も合わせるとイランとイエメンのフーシ派は共同で14発の弾道ミサイルを本報復で発射した。
イラン中部テヘラン州マラードからイスラエルに向けて弾道ミサイルが発射される映像
さらに特筆すべきこととしてイランが3つの波の攻撃を行なっている最中に、ガザ地区から1発のロケット弾がガザ地区以北に向けて発射され、一部地域で空襲警報が発令された。ロケット弾は飛行過程で不具合が生じ、ガザ地区内に墜落したとされるが、ガザからイスラエルへのロケット弾攻撃は25年10月の停戦以来から発生しておらず、本攻撃で注目すべきことは攻撃の規模や成功の可否ではなく、パレスチナの派閥(ガザ地区にはハマスの他にイスラム聖戦やパレスチナ解放人民戦線などロケット弾攻撃を行える有力な武装勢力がいくつも存在している為、ハマスと断定するのは時期尚早なことから、パレスチナの派閥と表現。どの組織が行なったのか声明が発表され判明したのなら追記で掲載したい)が停戦以来初めてロケット攻撃を実施した政治的なインパクトであり、攻撃がなにを意味するのか断定は出来ないが、イラン及び抵抗の枢軸の最も重要な大義であるパレスチナ解放への連帯と支持の再確認と、ガザ地区内に留まり続けるイスラエルを牽制する狙いがあると考えられる。
また、これらの攻撃を受けてイスラエルの安全保障閣僚会議は同日午前11時に緊急会合を開いた。
イスラエルでは殆どが迎撃され、少なくとも1発の弾道ミサイルがヨルダン川西岸地区のイスラエル人入植地に着弾、また迎撃にあたって大量の迎撃ミサイルが発射された
おそらくイランから発射された弾道ミサイルの1発が聖地エルサレム近郊のパレスチナ、ヨルダン川西岸地区イタマルのイスラエル人入植地の開けた場所(農場)に着弾したことが視覚的に確認され、おそらく迎撃ミサイルないし電子戦により、軌道が逸れて着弾したのだろう。攻撃後、イスラエル人集落の3軒の住宅に被害が発生したことが確認された。
またイスラエル南部では大量の迎撃ミサイルが発射されたことを示す痕跡が撮影された。
通常弾道ミサイルを確実に迎撃するには最低2発の迎撃ミサイルを発射する必要があり、これが空軍基地や政府関連施設が密集する重要な地域となると1発辺り3〜4発と増加する傾向にあり、人命を優先するイスラエルは人口密集地では1発辺り3〜4発発射を好む傾向にある。イランのイスラエルに到達可能な弾道ミサイルは大幅なレンジがあるものの、基本的なものは50〜100万ドル前後と推定されており、一方イスラエルの迎撃ミサイルは推定で大気圏外迎撃ミサイルアロー-3は200〜300万ドル、アロー-2は150万ドル、ダビデスリングは100万ドルとされており、1発対1発でもコスト面で不利な状況にも拘らず、イスラエルは基本的に最低でも2発、人口密集地や重要施設上空では3〜4発発射している状況で、非常に高い迎撃率を誇るイスラエルの成功に目が行きがちだが、成功してもコスト面では苦戦を強いられている側面も認識することが重要だ。
だが、コスト面で苦戦を強いられているからと言って迎撃手法(1弾道目標に対して3〜4発)を緩めたりして突破率が上昇すると、それこそイスラエルが恐れていた展開になる為、イスラエルとしては高い迎撃率を維持しながらコスト面の改善を図る必要性が高まっている。
下記:イスラエル中部で複数の迎撃ミサイルが発射されたことを示す痕跡の画像
イランは報復終了を宣言、フーシ派については新たな記事でまとめたい
攻撃終了後、イランのハタム・アル=アンビヤ中央本部(革命防衛隊と国軍の統合作戦本部)は声明を発表し、
「現時点では、我々の攻撃は終了した。今後、シオニスト政権が我々に対する、あるいはレバノン南部やレバノンのその他の地域に対する攻撃を継続する場合、我々は攻撃を行い、彼らに厳しい報復を加える。」
と述べ、今回の報復攻撃終了を公式に宣言した。また前回行われたイスラエルによる報復攻撃が意味していたこと(イランが攻撃する度にイスラエルは反撃するという抑止力の誇示)には気にも留めず、今後もイランがレッドラインとしている首都ベイルートの攻撃に加えて、これまでは象徴的な警告に留めていたベイルート以外の地域やIDFとヒズボラによる交戦が続いている南部地域での攻撃(おそらく空爆を指している)もレッドラインであるかのように仄めかす声明となった。レッドラインが本当にその他地域や南部地域にまで拡大したのかは、今後のイスラエルの空爆に対するイランの反応(またしても警告の声明で収めるのか、弾道ミサイルを発射するのか)で判明するだろう。
フーシ派も似たような声明を発表したが、フーシ派の声明には特筆すべき内容が盛り込まれていたので、これは後ほど新たな記事でまとめたい。
イスラエル北部の空軍基地にイランの弾道ミサイルが着弾したことを示す衛星画像が登場
イランとフーシ派、パレスチナの派閥による報復攻撃から十数時間後、イスラエル北部のラマト・ダヴィド空軍基地(Ramat David Airbase)の何らかの倉庫と思われる構造物におそらく1発の弾道ミサイルが着弾し、構造物の大部分が破壊されたとする衛星画像が登場した。
この被害は十数時間前のイスラエルの報復に対する報復でなのか、先日のベイルート空爆に対する報復で生じた被害なのか判断することは出来ないが、この2回の報復攻撃のうちどちらかで生じたのは確かだ。

