イスラエルが停戦以来初めてレバノン首都ベイルートを空爆、先日イランが宣言したレッドラインを越える

イスラエル関連
イスラエル関連レバノン関連中東関連軍事情報 (時事)

ベイルート時間6月7日(日)にIDF(イスラエル国防軍)はヒズボラの意思決定能力が集中するレバノン首都ベイルート・ダヒエ地区に対して空爆を実施。以前イスラエルのネタニヤフ首相やカッツ国防相がベイルートへの空爆をSNS(X)上などで示唆した際に、イランのハタム・アル=アンビヤ中央本部(革命防衛隊と国軍の統合作戦本部)は、

「ネタニヤフ首相がこの地域での侵攻を継続し、ダヒエ地区とベイルートを攻撃すると脅した。加えて同政権による停戦違反が繰り返されていることを踏まえ、攻撃が実行に移された場合、我々はイスラエル北部地域及び軍事入植地(軍事入植地は占領中のレバノン南部地域を指している可能性)の住民に対し警告する。被害を受けたくないのであれば、その地域から立ち去るべきだ。」

と声明を発表し、ベイルート、特にそのなかでもダヒエ地区が空爆された際はイスラエル北部及びレバノン南部のIDF占領地域に対し、イランから直接報復すると示唆していた。今回イスラエルはイランの警告を無視して空爆し、挑発した格好になる。

リンク:https://t.me/Middle_East_Spectator/32894?single

リンク:https://t.me/idfofficial/18654

リンク:https://t.me/rnintel/61942

イスラエルはイランを意図的に試している可能性

ベイルート・ダヒエ地区への空爆後、イスラエルのネタニヤフ首相とカッツ国防相は「イスラエル国防軍は、ヒズボラがイスラエル領土に向けて発砲したことに対して、ベイルートのダヒヤ地区にあるテロリストの本拠地を攻撃しています。」とする共同声明を発表。IDF(イスラエル国防軍)も公式Telegramチャンネルで「イスラエル国防軍は、ダヒエ地区にあるヒズボラのテロ関連施設を攻撃した。」とし、空爆を公式に認めた。

しかし今回の攻撃について奇妙な情報があり、イスラエルのチャンネル11(Kan11)、14(Now14)、15(i24)は、「この攻撃はヒズボラへのメッセージを送ることを目的としたものだったと報じている。ベイルートへの空爆は暗殺を目的としたものではなく、建物には誰もいなかったため、攻撃全体としては象徴的な意味合いが強かった」と報道。イスラエルのチャンネル14(Now14)のジャーナリスト、ヒレル・ビトン・ローゼン(Hillel Biton Rosen)氏は「私たちは、標的ではなく場所のために攻撃したのです。そこにヒズボラのテロリストがいたとしても、彼らは小さな標的に過ぎない」と発言。

さらにIDFの公式ラジオ放送であるガレイ・ツァハルのジャーナリスト、ドロン・カドシュ(Doron Kadosh)氏は「イランは、イスラエルによるベイルートへのいかなる攻撃に対しても武力で対応すると約束した。イランがその約束を守るかどうか、見てみよう」と述べており、イスラエルは今回の攻撃についてヒズボラの意思決定能力に打撃を与えることを目的とした軍事的な動機ではなく、イランが警告通りに報復するか探りを入れてみたかった(攻撃を実行したということは、恐らく報復しない可能性のほうが高いと判断したのだろう)という、軍事的に解釈すれば大胆な威力偵察なのかもしれないが、強い政治色を帯びた特殊な攻撃だったのは確かだ。

現在停戦は最も脆弱であり、停戦の行方はイランが警告通りにイスラエルへ報復するのか、それとも自制するのかに掛かっている状況と言える

イランはかつての2025年のレバノン南部のように、イスラエルが国際社会の視線に注目されないレベルの小規模な暗殺攻撃や施設への空爆をヒズボラに対して繰り返し、一方ヒズボラは少しでも反撃するとイスラエルに停戦違反と見なされ(イスラエルが停戦を破棄する正当性を与えてしまう)、お構い無しに非常に激しい空爆を浴びせられる環境に置かれていた為、ヒズボラ側のみ自制を続ける、所謂”非対称な停戦モデル”を仮想敵国がどの地域、どの環境下においても導入するのを激しく嫌っており、中東全土でパキスタン仲介の停戦が概ね維持されているのに対して、レバノン(ヒズボラ主導のシーア派社会)のみ依然として通常通りの戦闘がイスラエルと続いている現状を変更する為に、抑止力発揮の一貫として、イスラエルに多数の弾道ミサイルを発射する可能性は十分に考えられる。これまで停戦後チキンレースのように発生した散発的な衝突とは状況が全く違う。

しかし現状、イランによるイスラエルへの報復によってイスラエルはレバノンへの自制ではなく、イランへの再攻撃を選択する可能性も十二分に考えられ、イランとしては当然戦争は再開しないほうが得である為、折衷案として、これまでと同じような湾岸地域の米軍基地への攻撃に留まる可能性も考えられる。イラン政治指導部の思想のエスカレーションぶりから完全な自制を行う可能性は考えづらいが、イランが報復を行う際は国内または国民が被害に遭った場合であり、今回のような事例で弾道ミサイルで報復するのは前例が無い為、保守的に考えると完全な自制もあり得なくはないだろう。結局イランがどのオプションを選択する可能性が高いか筆者は断言出来ず、こればかりは時間を置いて観察してみるしかない。

追記:カタールは「地域の緊張」により、6月7日から13日までの間、カタール領空を通過する便を可能であれば迂回させるためのNOTAMを発行。湾岸諸国がイランによる報復に備え始めている兆候と言えるかもしれない。

タイトルとURLをコピーしました