前記事でイランがどのオプションを選択するのか観察してみようと筆者は書き込んだが、イランは最もエスカレーションする選択であるイスラエルへの直接的な弾道ミサイル攻撃を実施した。
前記事:https://mideast-africa-affairs.com/archives/103
イスラエルがイランがレッドラインと定める(詳しくは前記事を参照)ベイルート・ダヒエ地区への空爆を実施後、イランのモハメド・ガリバフ国会議長は、
「彼ら[米国とイスラエル]は停戦を真剣に考えておらず、対話も信じていない。そして、海上封鎖やレバノンでの違反行為を通じて、彼らが理解するのは力の言語だけであることを示してきた。イラン国民に対する海上封鎖、そして今日、米国がシオニスト政権に与えた「青信号」は、この地域にある米国およびイスラエルの基地や資産を正当な標的に変えた。我々の軍隊は、いつものように引き金を引く準備ができている。」
とXで発言し、さらにSNSC(最高国家安全保障会議)に近く、IRGC(イスラム革命防衛隊)の見解を反映しているとされるヌール・ニュース(Nour News)もXで、
「トランプは相変わらず同じことを繰り返しているが、テルアビブは書面上の停戦しか望んでいない。彼らはダヒエを攻撃し、同時に脅威をエスカレートさせた。しかしイランは、かねてより『戦略的忍耐』という方針を『懲罰的攻撃』のドクトリンに置き換えている。警告はすでに発せられていた。今や状況は一変し、責任の所在は明らかだ。それはワシントンとテルアビブである。」
と投稿し、何らかの軍事的報復を匂わせる発言がイラン側から続出した。同時期にカタールも「地域の緊張」により、6月7日から13日までの間、カタール領空を通過する便を可能であれば迂回させるためのNOTAM(パイロットや航空関係者に発出される一時的な航空情報)を発行、地域全体が緊張状態となった。
イランはレバノンのヒズボラを保護する(抑止力を発揮させる)ことを主な目的として、直接的な報復を選択
イラン側からの匂わせ発言、カタールのNOTAM発行の直後に、アムステルダムからドーハに向かう航空便がイラクの領空を避けて飛行し、またテヘランからイスタンブールに向かっていた便も突然引き返し、テヘランに着陸するなどの異常現象がFlightrader24で確認された。またイスラエルの公式Telegramチャンネルも、
「ベイルートに対するIDFの攻撃および状況評価の完了を受け、IDFは今後数時間以内にイスラエル国内に向けて攻撃される可能性に備えている。IDFは防衛態勢を強化しており、引き続き厳戒態勢を敷き、あらゆる防衛・攻撃シナリオに備えている。イスラエル国防軍参謀総長のエヤル・ザミール中将および上級指揮官らは現在、状況評価を行っており、事態の推移を注視している。」
と投稿され、イスラエルは当初イランの報復に対してやや楽観的な姿勢を見せていたが、報復の兆候を察知したのか、報復に対して真剣に備える態度に転換していた。(イランがヒズボラに関連して報復を匂わせ、警告していた動機について、詳しくは前記事を参照)
そしてイランは数時間後にイスラエル北部に向けて5つの波で構成された計約20発の弾道ミサイルによる攻撃を開始した。親イランOSINTのMESによると、「これまでに、タブリーズ、ケルマーンシャー、イスファハーン、コム、カラジ、カシャン、ウルミヤからミサイルが発射されている。イランのミサイル基地は稼働しており、各基地が順番に発射を行っている。」とし、発射はおそらく発射源を攻撃されにくくする為に、全土の複数から行われた。西部ケルマンシャー州では親政府集会に参加していた民衆がイスラエルに向かう弾道ミサイルを目撃し、歓声を上げるという狂った情景が撮影された。
結果は良く分かっていないが、おそらく殆どが迎撃された
MESはイスラエル北部でイランの弾道ミサイルが2発着弾したと投稿したが、これはおそらくオープンソース上からの多数の映像をもとに推測したものであり、爆発は無力化されたミサイルの破片や迎撃ミサイルの地上落下などで生じた可能性も十分に考えられ、多くても2発、そうでない場合は1発か全弾迎撃と考えるのが自然であろう。そもそもイラン側の声明を聞いても、イランが何を標的としたのかもよく分かっておらず、確実に言えることは「ベイルート空爆後にイランは全土からイスラエル北部に約20発の弾道ミサイルを発射し、その多くが迎撃されたが、1〜2発不明な箇所に着弾した可能性がある」ぐらいだろう。
追記:着弾した弾道ミサイルはクラスター弾頭であり、おそらく軍事施設には何の影響も及ぼさなかった。また軍事上以外に全土から発射した理由として、全てのミサイル基地が稼働していると抑止力を誇示する狙いがあったと見られる。
追記の追記:おそらく1発の通常弾頭がイスラエル北部に着弾したことを示す視覚的な証拠が挙がった。

報復攻撃後に出されたイランのハタム・アル=アンビヤ中央本部(革命防衛隊と国軍の統合作戦本部)の声明:「シオニスト占領軍は、ベイルートおよびレバノン南部への攻撃を直ちに停止しなければならない。もしシオニスト政権が侵略を拡大し続けるならば、はるかに厳しい報復に直面することになるだろう。」
イスラム革命防衛隊航空宇宙軍が公開した、イスラエル北部に向けて弾道ミサイルを発射する映像
追記:IRGCはShaned-136自爆型無人機をイスラエルに向けて発射する映像を公開した。
イスラエルによる報復に対する報復が進行している可能性
現在、イラン各地で爆発音がするとの情報が上がっているが、その多くはイランの軍隊自身による活動であり、現時点で筆者は真偽や正確な情報はあまりよく分かっていない。イスラエルが報復に対する報復を行っているのかは、後ほど新たな記事でまとめようと思います。
イランによる報復攻撃後、イスラエルのイタマル・ベン・グヴィル国家安全保障相の投稿「今夜、テヘランは燃え尽きなければならない。」

