先日イランとフーシ派、不明なパレスチナの派閥がイスラエルの報復攻撃に対する報復攻撃を実施し(詳しくは前記事を参照)、イランは報復終了を宣言し、パレスチナの派閥も以降音沙汰が無かったが、フーシ派のみが弾道ミサイルと自爆型無人機を用いた継続的な攻撃を現在まで続けており、また紅海においてイスラエル関連船舶の航行禁止を宣言し、事実上紅海においてイスラエルに対する海上封鎖を開始した。
イランとフーシ派、不明なパレスチナの派閥による報復攻撃について詳しくは前記事を参照:報復合戦の様相、イスラエルの報復に対してイランとフーシ派、不明なパレスチナの派閥が共同で報復攻撃を実施 https://mideast-africa-affairs.com/archives/151
事実上フーシ派は正式に再び参戦し、紅海におけるイスラエルに対する海上封鎖を宣言
先日のイラン側による報復攻撃から数時間後にフーシ派のヤヒヤ・サリー報道官は声明を発表し、
「イエメン軍は、占領下のヤッファ地域にあるイスラエル敵軍の重要目標を標的としたミサイル集中攻撃を発動し、その攻撃は精密に目標を達成した。こうした状況下において、武装勢力は以下のことを表明する。第一:我々は紅海におけるイスラエルの海上航行を全面的に禁止することを宣言し、本声明発表の瞬間より、敵のあらゆる動きを我々の武装勢力にとって正当な軍事目標とみなす。第二に:我々は、エスカレーションにはエスカレーションで応じると断言する。我々の軍事作戦は、戦場の情勢や戦闘の展開に応じて、またジハードと抵抗の枢軸と連携して、強化されていく。 第三に:我々は、わが国民及び我が自由な国家の諸民族が、アメリカ・イスラエルの侵略に立ち向かう権利を有することを断言する。我々は、パレスチナ、ガザ、イラン、レバノン、イラクにおける我々の人民およびジハード・抵抗の枢軸の諸民族に課せられた不当な包囲に対し、決して傍観することはない。アッラーの御意志により、敵のあらゆる企ては失敗に終わり、我々に対する侵略と包囲、ならびにジハード・抵抗の枢軸に対するそれらが継続する限り、我々の作戦は続くであろう。」
と述べ、イランは報復終了を明確に宣言したものの、フーシ派はそうでなくむしろガザでの25年10月の停戦以来行われなかった紅海におけるイスラエル関連船舶への海上封鎖(事実上の通商破壊作戦)を宣言した。

赤(斜線あり):大まかなフーシ派支配領域
黄:今回フーシ派がイスラエルに対する海上封鎖を宣言した紅海
オレンジ:地政学的な要衝チョーク・ポイントとされるバブ・エル・マンデブ海峡、同海峡がホルムズのように封鎖されればスエズ運河は実質的に通航不可となる
緑:アデン湾、今回フーシ派は宣言していないものの攻撃が行われた前例があり、紅海で攻撃が行われた際に同海域でも船舶への攻撃が発生する可能性は高い
※非常に雑な図で申し訳ない
画像出典:Google Earth / Google
この海上封鎖宣言はブラフなのか実行するつもりなのかは今後、この海域で発生する海難事例を観察していけば判明するだろう。判明した際は新たな記事で取り上げようと思う。
またフーシ派はイスラエルに対する弾道ミサイル、無人機攻撃も継続し、イスラエルは受動的な空中戦においてレバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派と二正面作戦を迫られる
イランが報復攻撃終了を宣言してから十数時間経過したにも拘らず、IDF(イスラエル国防軍)は、南部エイラートでイエメンから敵対的な無人機が飛来してそれを迎撃したことを公式Telegramチャンネルで投稿した。
イエメンからイスラエル南部エイラートに飛来した自爆型無人機が迎撃される映像
また後日、親イランTelegramチャンネルMESによるとイエメンからイスラエルに向けて弾道ミサイルが発射されたという初期報告を上げ、結局弾道ミサイルは推進過程で不具合が生じ、イスラエルに到達することが出来なかったそうだが、イランの報復終了から日を跨いで2日近く経っても尚イスラエルへの攻撃を続けているということは、フーシ派は単なる報復に留めずレバノンやイラン情勢のエスカレーションぶりを鑑みて、イスラエルに対して継続的な攻撃を実施する選択、つまりイスラエルのエスカレーションが収まるまでの間、参戦を選んだ可能性が高い。
筆者は前の記事でも述べたように、イスラエルはイラン側から発射される安価な飛翔体1発に対して高価な迎撃ミサイルを複数消耗する、空中戦における非対称性に悩まされており、停戦後は北のレバノンから発射されるロケット弾や自爆型無人機に対処するだけで比較的防空リソースに大きな負荷が掛かることは無かったが、南のイエメンからも弾道ミサイルや自爆型無人機が発射されることになれば南部にもリソースを平時より多めに割く必要があり、もちろん一概に断言することは出来ないが、この状況が長引き、より大規模になるほどイスラエルは受動的な空中戦においてはコスト面での苦戦が続き、民間人にとっても連日空襲警報が鳴り響くような状況になれば、紛争の出口戦略を見出すことに苦戦している現政権に対して外交・安全保障政策面で不満が高まり、場合によっては厭戦気分が台頭して戦争継続が困難になる可能性も現時点では可能性は大きく低いものの、対イラン戦争を続けるネタニヤフ政権やタカ派政治家にとっての最悪のシナリオとして留意しておく必要があるだろう。

