トランプ大統領は我慢の限界、イランに49発のトマホーク巡航ミサイルを発射、イランは弾道ミサイルと無人機で反撃し、ホルムズ海峡の再封鎖を発表

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アメリカ関連イラン関連中東関連軍事情報 (時事)

10日(水)、イラン外務省のイスマイル・バカエイ報道官は、「昨夜の情勢を踏まえると、交渉を行うには少なくとも最低限の建設的な雰囲気が必要である」と述べ(現時点ではそのような雰囲気は存在しない)。トランプ大統領もTruth Socialで「合意の交渉に時間をかけすぎた結果、今やその代償を払わなければならない」と投稿し、後に米軍はイランに多数のトマホーク巡航ミサイルを発射、攻撃後イランも反撃し地域の米軍基地に向けて弾道ミサイルを発射した。

出典:N12

N12の該当記事リンク:https://www.mako.co.il/news-world/2026_q2/Article-592b49d8d34be91027.htm

出典:Middle_East_Spectator

出典:War Noir

おさらい:停戦交渉のこれまでの基本的な流れ、トランプ大統領はイランの行動にイライラを募らせている。

イランは最大限の要求を突きつけ、要求が通るまで耐久を続けている

保守強硬派のモハメド・ガリバフ国会議長が主導するイランの交渉代表団は、一貫して最高指導者の外交・安全保障面での実務面における意思決定を統括するSNSC(最高国家安全保障会議)が定めた10項目を合意の基軸とする構えを見せている。10項目の内容は以下の通り(過激な文言が含まれている為、筆者が意訳している)。

1. アメリカの自国に対する不可侵の確約

2.ホルムズ海峡におけるイランの継続的な支配の容認

3.ウラン濃縮の容認

4.全ての一次制裁の解除

5.全ての二次制裁の解除

6.イランに対する国連安全保障理事会決議の全てをを無効化すること

7.イランに対するIAEA理事会決議のすべてを無効化すること

8.本戦争におけるイランへの賠償金の支払い

9.地域(中東や周辺海域)からの米軍の撤退

10.すべての戦線における戦争の停止(特にレバノン)

6と7に関しては国際機関の決定であり、米国の意思ではどうにもならない為、あくまでこれまでの正当性を主張する形式上のパフォーマンスに過ぎないと考えられる。よってこの部分はおそらく無視してよいだろう。

イラン、特に国家元首モジタバ・ハメネイ最高指導者と、交渉を主導するガリバフ国会議長の目的は、現在の戦闘とエスカレーションを緩和しつつ、制裁解除や賠償金を通じて経済的利益を受ける。中東に展開する米軍の規模を縮小ないしは撤退させる、また高濃縮ウランを維持して潜在的核保有国の地位を確固たるものにして軍事的な利益を受ける。ホルムズ海峡における統制を確立し地政学的な利益を受けることだ。イランはこれに妥協の構えを見せていない。またイランは加えて停戦以来アメリカが主にアラビア海で実施しているイランに対する海上封鎖の解除も交渉における前提条件としている。

そしてついにイランは停戦合意の大前提と定めているレバノンでの停戦が全く実現されていないこと(ヒズボラはイランの停戦宣言後に戦闘を停止したものの、イスラエルが戦闘を継続している為、1日で戦闘を再開した。)、アラビア海での海上封鎖が継続されていること、そもそも直接での戦闘頻度が増加していることから、イラン外務省のイスマイル・バカエイ報道官は、「昨夜の情勢を踏まえると、交渉を行うには少なくとも最低限の建設的な雰囲気が必要である」と述べ、現在そのような雰囲気は存在しないことから事実上の合意に向けた交渉停止を公式に宣言した。

アメリカはイランの要求の大部分を拒否、特に濃縮ウランは譲れない

アメリカ側には最終意思決定を握るトランプ大統領に加え、ヴァンス副大統領やトランプ大統領の娘婿ジャレッド・クシュナー和平特使、スティーブ・ウィトコフ中東担当特使が主導している。

当然アメリカはイランの大部分の要求を拒否し、イランに送り返した修整案には全ての濃縮ウランの引き渡し及び今後のウラン濃縮含む兵器転用のリスクがある核開発全ての停止、それに係る監視メカニズムの導入を求めていることが判明している。ウラン濃縮については勿論だが、地域からの米軍撤退や国連海洋法条約により、国際海峡とし特定の国家による支配が認められていないホルムズ海峡の実効支配を認めることは実質的にアメリカの無条件降伏に等しく、当然これらも拒否したと考えられる。

イラン外務省バカエイ報道官による事実上の合意に向けた交渉停止の声明後、トランプ大統領はTruth Socialで、

抜粋訳:「合意の交渉に時間をかけすぎた結果、今やその代償を払わなければならない」

と投稿し、当初ホワイトハウス見解で4日で終了するとされていた軍事作戦が明確な勝利を得ることが出来ず、攻撃開始から100日以上経過しても未だにアメリカの納得する出口が見出せないことからトランプ大統領は怒りを募らせ、イランへの再攻撃をちらつかせた格好となった。

アメリカは49発のトマホーク巡航ミサイルで一時的な攻撃を実施

トランプ大統領が再攻撃をちらつかせる投稿をした後、MESは2つの波で構成された米軍によるイランへの攻撃を報告し、第一波ではシリク(Sirik)の海軍基地、ミナブ郊外(Minab)、バンダレ・アッバース(Bandar Abbas)、ゲシュム島(Qeshm)が攻撃を受け、アサルーイェ(Asaluyeh)のサウス・パルス・ガス田に接続されている石油化学コンビナートに巡航ミサイルが飛来したが、こちらは防空システムが迎撃に成功し被害は無かったとのこと。加えてバンダレ・カンガーン(Bandar Kangan)の海軍基地、カルガン(Kargan)、ヘンガム島(Hengam)、ブーシェフル(Bushehr)が攻撃を受け、第二波ではカラジ(Karaj)とガルムサール(Garmsar)、バラーミーン(Varamin)が攻撃を受けたと投稿した。

後にイスラエルのN12は、

הנשיא טראמפ חשף ברשת פוקס שהצבא האמריקני תקף באמצעות לפחות 49 טילי טומהוק מטרות ברחבי איראן בדגש על דרום המדינה, והכי קרוב שהגיע לתקוף את עיר הבירה טהראן היה תקיפה במרחק כ-60 קילומטרים ממנה.

筆者訳:トランプ大統領はフォックスニュース で、米軍がイラン全土の標的を攻撃す るために少なくとも49発のトマホーク ミサイルを使用し、特に同国南部を重点的に攻撃したこと、そして首都テへ ランへの攻撃に最も近づいたのは約60キロ離れた地点だったことを明らかにした。

と報じ、攻撃に少なくともトマホーク巡航ミサイルが49発使用されたことが判明した。詳しく知りたい方はN12の記事を是非参照して欲しい。

האמריקנים תקפו תשתיות צבאיות, האיראנים הגיבו בירי לרחבי המפרץ
לילה שני ברציפות של מהלומות בין ארה"ב לאיראן • האמריקנים פתחו במתקפה ולטענת טראמפ השתמשו בעשרות טילי טומהוק מול המטרות •…

イランの防空能力が向上し、戦闘機の侵入が困難になっている可能性

前回イスラエルが実施した報復攻撃でもALBM(空中発射弾道ミサイル)や巡航ミサイルといったスタンドオフ兵器が集中して投入され、今回の米軍の攻撃でもスタンドオフ兵器の代表格であるトマホーク巡航ミサイルが集中投入された。イスラエルとアメリカが従来の戦闘機を用いた比較的安価で、在庫の豊富さや量産性に優れる誘導航空爆弾を使用してイラン国内の目標を空爆するという手法を採らなかった理由として、戦闘機の侵入=停戦の破棄とイラン側に解釈されないように、つまり政治的なエスカレーションを避ける為だったとする可能性以外に、単純にイランの防空能力が向上し戦闘機の侵入が困難になった可能性が考えられ、イランは先の戦闘での教訓をもとに停戦期間中に全国的な防空システムの再配置と指揮系統の最適化(指揮系統上部の人間が殺害されたり、通信施設が空爆によって麻痺する前提を想定し、現場の防空要員の裁量が大幅に拡大されたこと)を行ったと考えられている。

興味深いことに今回の攻撃中にIRGC(イスラム革命防衛隊)は、「F-16がイランの領空に侵入したことを検知し、地対空ミサイルを発射して退却させた」との声明を発表しており、この声明がプロパガンダの可能性も否定は出来ないが、事実なら防空システムの再配置と指揮系統の最適化によりイランは以前より効果的に航空機を攻撃することができるようになったことを裏付けている可能性がある。

下:イラン・イスラム共和国空軍のF-14トムキャット戦闘機がイスファハーンで迎撃戦闘に参加していることを示す映像

イランはバーレーン、クウェート、ヨルダンに弾道ミサイルと無人機を発射して反撃、またホルムズ海峡も再封鎖

米軍による攻撃後、イラン・イスラム共和国軍はバーレーンにある米海軍第5艦隊の通信塔とパトリオットレーダーを無人機で攻撃したと発表した。またイスラム革命防衛隊航空宇宙軍はクウェートのアリ・アル=サレム空軍基地及びアル=ジャベル空軍基地、ならびにバーレーンのシェイク・イッサ空軍基地に対し、2回の攻撃で計18の標的を攻撃したと発表し、また後にヨルダンのムワファック・サルティ空軍基地のF-35、F-16、F-15戦闘機の格納庫、重要な施設、基地の指揮・管制センターを12発の弾道ミサイルで攻撃したとも発表した。(それぞれの声明では全てないし殆ど命中した、破壊したとの文脈が盛り込まれていたが、これは明らかにプロパガンダ要素を強く含んでいるのでここでは除外した。)

追記、下:IRGCはバーレーン、クウェート、ヨルダンに向けて弾道ミサイルを発射する映像を公開した。映像で筆者は少なくとも9発の弾道ミサイルが発射されたのを確認出来た。今回の攻撃の一部では先進的なヘイバル・シェカンMRBM(準中距離弾道ミサイル)が使用されたようだ。

バーレーン、クウェートでほぼ全てが迎撃されたが、バーレーンで早期警戒レーダーに着弾

筆者が迎撃戦闘中の時間帯の公開情報を確認したところによると、バーレーンでは弾道ミサイルと思われる飛翔体が飛行していることを示す映像が登場したが、着弾を示す爆発音や視覚的証拠は無く、爆発音の投稿は迎撃によるものだと判明した。クウェートでもShahed-136が飛行していることを示す映像が登場したが、着弾を示す証拠は無く、バーレーンとクウェートでは全てないしほぼ全てが迎撃されたと考えられていたが、後に登場した視覚的証拠となる画像の登場によりバーレーンでBAE Systems社製のAR-327早期警戒レーダー施設に着弾があったことが判明した。(下:バーレーンでAR-327早期警戒レーダー施設に着弾したことを示す画像)

AR-327早期警戒レーダーは損傷ないし破壊された可能性が高く、イラン攻撃以降イランによって中東各国で自国ないし米軍の高価な早期警戒レーダーの損傷ないし破壊が立て続けに起こっており、この類のレーダーが機能不全に陥るとイランから発射された飛翔体の発見、追跡が通常では困難になる為、今回の着弾はより一層今後の飛翔体の探知が通常では困難になることを意味しているだろう。

(下:バーレーンを飛行するIRGCが発射した弾道ミサイルと思われる飛翔体)

(下:クウェートを飛行するIRGCが発射したと見られるイラン製無人機Shahed-136)

ヨルダンでは米軍基地に加えて首都にも飛来、また複数の弾道ミサイルの着弾が確認

一方ヨルダンではどうやら、MESによると首都アンマンでパトリオットと思われる迎撃ミサイルの発射が視覚的に確認され、イランが声明で攻撃を認めたムワファック・サルティ空軍基地はアンマンから北東に約100km離れた地点に位置している為、パトリオットの弾道弾迎撃用のPAC-3シリーズの射程を考えてもアンマンからムワファック・サルティ空軍基地に向かう弾道ミサイルの迎撃を支援していたとは考えづらく、おそらくイランはアンマンの何らかな目標にも攻撃を仕掛けていたのだろう。(下:ヨルダン首都アンマンからパトリオット、PAC-3と見られる迎撃ミサイルが発射される映像)

またムワファック・サルティ空軍基地で多数のパトリオットと思われる迎撃ミサイルが発射され、少なくとも2発の弾道ミサイルが着弾したと見られる映像が登場した。詳しい被害については衛星画像などを通じて明らかになった際は追記、または新たな記事で伝えようと考えています。(下:ムワファック・サルティ空軍基地で多数のパトリオット、PAC-3と見られる迎撃ミサイルが発射され、少なくとも2発の弾道ミサイルが着弾したと見られる映像)

下:またヨルダンの不明なミサイルが着弾したとされる映像が登場し、上空に迎撃ミサイルによる煙が見られないことからムワファック・サルティ空軍基地に着弾した2発でないことは明らかで、防空システムが作動する前にムワファック・サルティ空軍基地に着弾したのか、それとも首都アンマンに着弾したのか、そのどちらでもないに着弾した可能性や空中の目標を失ったないしは誤射した迎撃ミサイルの可能性など、様々な可能性が無数に考えられ有力な結論を出すことは不可能だ。

条件付きで部分的に開放されていたホルムズ海峡も再封鎖される

画像:イランのハタム・アル=アンビヤ中央本部(革命防衛隊と国軍の統合作戦本部)の報道官イブラヒム・ゾルファガリ准将

米軍による攻撃後、イランのハタム・アル=アンビヤ中央本部(革命防衛隊と国軍の統合作戦本部)は「ホルムズ海峡を全面封鎖し、今後、通行料の有無にかかわらず、いかなる船舶の通過も一切認めない」と発表し、停戦後は通航料の支払い(国際法的には認められていないが)により通行が1日辺り20〜30隻と、戦前の120〜140隻/日の水準には遠く及ばないものの、部分的に通行が再開され通行量における正常化の兆しが見えていたものの、再び振り出しに戻った格好だ。

また、イランは再封鎖後に突破を試みた2隻の船舶に対し対艦ミサイルによる攻撃を実施した模様だ。

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